サイト・スペシフィック Site Specific

 ある特定な場所を対象にした作品制作、あるいはその性質や方法のこと。サイト・スペシフィックでは、そのサイト(環境・土地・会場空間、あるいは歴史やそこに関わる地域の人々の生活などを含んだ)にまつわる特別な諸条件に注目し、それを考慮しながら作品に構造化される。作品を観る人が、そこでしか体験できない「その場(ここ)・その時(いま)」の唯一性を感受できることが、この種の作品の眼目だと思う。その意味で、美術館などでどこでも移動可能で、同じ作品が展示されるタイプのインスタレーションとはかなり異なるといえよう。

 日本では、インスタレーションという言葉が一般化し始めた80年代の初頭、単なるウィンドウディスプレイのような空間もひっくるめて、サイト・スペシフィックな作品と混同されて用いられ続けた経緯がある。私はそのようなインスタレーションのあり方に疑問を感じていたので、自分流のフィールドワークを作品の中に取り込んでいったのだが、後年この言葉があるのを知って少し納得したものだ。

初期の作例をあげれば、クリスト夫妻の作品があげられる。彼らの場合は、プランを構想してから長い時間をかけて地元の人たちと交渉しプロジェクトを実現化する。その方法論はその後の様々なプロジェクト型のアートに大きな影響を及ぼした。

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