インスタレーション Installation
直訳すると、作品を「設置」するということ。つまり、出来上がった絵画や彫刻等を美術館やギャラリーなどに持ち込み、個別に展示するのではなく、空間全体を対象とし、それ自体が作品となる展示方法。絵画や彫刻といったジャンルでは括れなくなった作品に対して、アメリカでは70年代以降用いられるようになった。必然的に、いずれ撤去される一時的な展示が多くなる。(中には恒久的に設置されるような作品や、その都度設計図に沿って再制作・再設置されるものもある。)
ちなみに私が作品を発表し始めた70年代末、日本ではこの言葉はあまり使われておらず、私自身「空間全体を用いた作品展示」という言葉で説明していたのを記憶している。その後、使用上の便利さも手伝い、絵画や彫刻のような「形式」「ジャンル」と混同されたまま、急速にこの言葉は広まった。'80年代初頭、いまでいう'80年代ニューウェーブと称された若手作家が出てきた時(時代的にはもちろん私もその中に含められるのかもしれないが)、平面出身の作家のインスタレーションと立体出身のそれとは一目で分かる違いがあったことが面白かった。アプローチの仕方が本質的に異なったのだ。あえて乱暴に例えて言えば、若い作家にとってはF・ステラの作品からの影響と、A・カロの作品からの影響の違いのようなものだったのだろう。
その後、日本では概念規定が曖昧なまま、絵画や彫刻に替わる新しい表現形式との幻想を抱いたり、あるいは単なるディスプレイと混同されていた時間が長らくつづいた。いまでもその後遺症は残っていると感じることがしばしばある。とはいえ、この言葉に絵画や彫刻のような「形式」としての歴史性や独自性を加味したフォーマルな概念規定を施す必要もあまりないと感じる。一般的に使用している限りでは、あくまでも美術における展示の「方法」の一つとしてとらえるのが妥当なのだろう。
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