紙一重で全く異なる世界というものがあるのではないか? 例えば、埋め立て地においてダブって感じられる、都市の成れの果てとしての風景と、原初的な裸形の風景。この二つの象徴的風景に私が感じる、ある境界の有り様のイメージに着目してみる。この境界には「未来への記憶」と「過去への予感」とでも呼びうる、不思議な精神作用にまたがる四次元的な厚みがあるようだ。そしてこの厚みを様々な角度から断層化する行為、これが私のフィールドワークといっていい。
 私の作品にはこのフィールドワークを通じ、私が設定した環境の時空間が構造化されている。つまり、観客は私たちの棲息する環境を、その断層面として見る。そしてその断層面を貫く、物質や情報の流れの中に身を置く、ということになる。この流れに向かい合ったり、紛れ込んだりしながら、厚みが紙一重にしか感じられぬ程に、否応なくワープさせられてしまう‥‥、そんな体験の体験のダイナミズムが面白いと思っている。

「ルナミセレクション'88展」 カタログ コメントより 1988.7月 発行



Home    プロフィール   その他の文献資料

Copyright (c) MARUYAMA Tokio. All rights reserved.