Between ECO & EGO 2006
 ー インスタレーション作品  CASA「川口ー空模様」について   (2006)

  

ここ、芝崎邸・離れの旧家は、築100年くらい経つそうです。昔の家特有の、何か懐かしい香りが漂います。かつて使われていた調度品も少し残っています。展示の為にだいぶ片づけられていますが‥。

この作品は「インスタレーション」とか「サイト・スペシフィック」と呼ばれる現代アートの展示方法で、和室全体が一つのまとまりのある作品といえるものです。つまり、元々あるこの部屋、さらに言えば、家屋や庭、敷地や周囲の通り、川口の街そのものまで、作者は制作意図の中に取り込もうとしているのです。



例えば、壁と障子の前に吊るされた2枚の布の写真は、この家屋の屋根+空と、ここから見える川口の高層マンションのシンボル的存在であるエルザタワーとその周辺の建設現場の様子です。2枚は、空の広がりや電線とともに、新旧の時代が対比されています。
押し入れに置かれたモニターの映像では、川口市内の各所で撮影された雨の日の情景が編集されています。雨粒の滴下と煙突の煙の上昇、駅の出入り口付近を急ぎ足で歩く人々の左右に移動する流れと、閑散とした路上を、時々、前後に行き交う人や車の往来などが映し出されます。プロジェクターで床に投影された映像では、この芝崎邸の小さな庭から見上げたスカイライン(軒先や樹木で切り取られた空の形)と作者の姿が、交互に、浮遊するように現われたり消えたりします。(どちらの映像も、約8〜9分間隔でリピートしています。)
床に置かれた家型のオブジェは、この家屋そのものを模しています。これには、見る人自身が巨大になったり、あるいは小さくなったりするような感覚を与える効果があります。また、それにより、白い床面そのものが、まっさらな土地の広がりを持つかのような暗示が与えられています。さらに、ご覧になってわかるように、その上方には、傘が奇妙な形で設置されています。なぜでしょうか? 皆さんなりに想像してみて下さい。

以上のように、作者は、「川口」という街や「傘」などから得たインスピレーションを元に、様々な素材と方法で、私たちが住む環境を複合的にとらえようとしています。結果、そこには必然的に、今の時代を生きる私たち自身(エゴ)や、身の周り(エコ)に対する意識(あるいは無意識)が投影されてくるでしょう。つまり、タイトルの「空模様」には、単に天候のことを指しているのではない、私たちが生き、そして住む、この時代そのものの気配のようなものも含まれているといえるのです。(ちなみに、CASAは傘とイタリア語の「家・住まい」を掛け合わせたものです。)

市民向けのコメントより 2006.10月


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