MARUYAMA Tokio
1992
大町野外美術展 中山高原 大町スキー場
「土地の系」ー水流に沿って
丘の中腹より上方の松を臨む
丘の中腹より下方を向く
素材:植木鉢、塩ビパイプ(80m)、鏡
南北に走る道路をはさむ夏場のスキー場は、通りすがりの風景の一部にしかならないような、ただの傾斜地である。そこの丘の中腹に、一本の松の木がある。そこから東西軸に合わせて鏡と水路を設置し、一種の「視線の通過場」と呼びうるものを設定してみる。
上の植木鉢にたまった水が、下の鉢に流れ降りるのは26秒という短い時間なのだが、その区切られた水の旅路の時間の前後から、他の様々な異なった時間が引き込まれ、立ち現れてくるように私には思える。松の幹の上をひっきりなしに上下に移動しながらモノを運ぶ蟻の群れ、水路の軸線上のゆくえにある公衆トイレに入る観光客たち‥‥。通りすがりにチラリと見える白いライン状のパイプと、鏡の反映によって形成された「視線の通過場」から、ほとんど無関係にしか思えないような事象の数々が、人の知覚の中で、一種のパースペクティブをともないながらつながり、結び合わされてくるのだ。
さらに、パイプの中を流れる水は、その周辺に棲息する生物たちの時間を引き込みながら、傾斜地を降りていく。後で開けられる下の植木鉢のフタの中からは、どのような時間が堆積されて見えてくるだろうか? (1992)
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