MARUYAMA Tokio
1989
Photo Drawing

"Dropping through"
Field work at Construction site of Tokyo Metropolitan government office building



フォトプロセス・現地にて採取した泥、セメント粉など
1100 x 1900 (mm) 板橋区立美術館 所蔵

東京・西新宿のこの場所に立ち、建設中の新都庁舎ビルを見上げた時、これは壊れているのだ、と感じた。未来に向かって形成されているはずのものが、過去に向かって時間が逆転して存在しているかのようだった。あるいは、数十年後(?)の未来に、崩壊しているビルの様子を透視したのだろうか。
その後、2001年の9.11の惨状とこの光景とが繋がることに気づくのにしばらく時間がかかった。実は、私は時々、天変地異や大事件、人の健康状況などの予知夢を見てしまうことがある。見てから数週間後に、同じような光景を現実に目の当りにすることもあるし、何年も経ってから、そうだったのか、と気づくこともある。この場合、単なる偶然のこじつけかもしれないが、自分では、現実の中で体験した予知夢のようなものだったかも知れないと思っている。

布地に焼き付けたダブルイメージの写真の上に、泥やセメントでドローイングしたり、スクラッチしたこの作品は、あるわがままな仕掛けが施されている。数年で画像が変色し、いずれ消滅して行くように‥。変質しないことを建前とする「もの」としての作品に、時間を強制的に導入しようとしたのだ。インスタレーションやパフォーマンスをメインとする私の制作行為において、一時性・一過性・瞬間性といった時間的特性が作品に帯びてしまうのはある意味、当然なのだが、この場合、あえて人工的に変質時間が速まるように処理をしている。文字どおり「パフォーマンスする絵画」といったところか。

作品の作り手としては、「いいかげん」とのそしりを免れないかもしれない。現状の保存を前提とする美術館には申し訳ないが、コンセプトの一部なので致し方ない。初めに直感した建設現場における崩壊の予感と、時間が未来にも過去にもランダムに流れている知覚の感触が、このわがままな方法を生み出したのだ。 (2003. 記)


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